シェアハウス専門ポータルサイトのスタッフによる、シェア生活を楽しむための探検レポートブログ。東京、神奈川、千葉、埼玉、 そして全国各地のシェア賃貸住居をひたすら探検する専門ポータルサイトの隊員達。明日はあなたの物件へ・・・!?
若松町の歩み。
自分の場合、その時代を享受したわけでもありません。なのになんでしょう、憧れと郷愁の念に駆られてしまう昭和という時代。
今でこそスカイツリーが注目されていますが、昭和といえば日本のシンボル・東京タワーが建立された高度経済成長の時期。その影響かどうかはわかりませんが、この時代のデザインってかなり個性的でカラフル。個人的に好きな時代でもあります。
さて、今回ご紹介する「CORE 牛込若松」は約50年前に建てられた家屋。古き良き時代の面影に、設計士さんの遊び心を加えてリノベーションしたもの。そこにオーナーさんの牛込という土地に対する想いも重なり、懐かしくも新しい、素敵なバランス感覚のシェアハウスになりました。
新宿からほど近い若松河田駅から少し歩き、大きなスーパーのあたりから、路地をひとつ奥に入ったところに今回のシェアハウスがあります。
建物の全景は、目の前に立ちふさがる駐車場越し。都心の古い建物ならではの光景です。入口の脇に立つブロック塀に飾られているサインには、実はいくつもの意味が重ねられているとのこと。
アプローチのゆるやかなカーブを描く石畳を進んだ先に、正面玄関があります。
ドアの脇には、カメラ付きのインターホンが。
玄関ドアの鍵はシンプルなもの。
では早速、レバーを引いて建物の中へ足を踏み入れてみます。
さて、ドアを開けると、まず驚きが待ち構えています。
玄関がとっても広い!
良い具合に明かりが入る窓もあり、都市部の住宅としては稀有なほどの、とても高い快適性。ちなみにオーナーさん、こちらを「土間」と呼んでいます。まさに。
土間の正面にある靴箱は、扉式ではなく引き戸となっています。
靴箱は他にもありますが、どちらも高さはなく、ブーツ類は部屋で管理することになりそうです。
住居のサインがデザインされた玄関の窓。
午前中、陽射しを受けると得も言えぬ輝きを見せるそうです。オーナーさんのお気に入りのひとつだとか。
さて、内部から見た正面入口はこんな具合。
そして、この廊下の奥がリビングにつながっています。右手のドアはトイレ。
左側の部屋は共用の和室で、リビングにはここを通っても行けます。
和室は玄関からダイレクトに入れるので、ちょっとした来客用のお部屋とすれば他の入居者と動線が被らずスムーズに案内できそう。通路の壁に取り付けられた木製のボックスは、仕切りがあるので郵便の仕分けとしても使えるかも。
早速リビングに入ると、節の多い木材を使用した味のある親しみやすい空間が広がります。
節の木材もあえて使ったとのこと。きれいな木目のフローリングもカフェっぽくおしゃれですが、これはこれでログハウスっぽく素敵。奥のドアの先にはバスルーム、専有部、2Fにつながる廊下があります。
木材は多摩で採られた無垢の杉で、そこに蜜ロウ(これもまた自然塗料)のワックスでコーティング。なるべく体に優しい素材を、というのもこの住居のコンセプトの一つ。
陽射しがたっぷり入るので、窓辺に腰かけてのんびり茶をすするのも気持ちよさそう。今回のシェアハウスの大きなポイントは、素敵な空間もさることながら、玄関とリビングを共に絶妙な配置でつなぐ、この和室ではないかと思います。
来客対応、日常的なリラックス、ちょっとした作業などなど、様々なシチュエーションに柔軟に対応できそうな配置の仕方は、新しいシェアハウスのスタンダードになって欲しいほど。
リビング側から見た和室は、独特の畳の敷き方が目にとまります。
ちなみに個人的に畳は中国からの由来というイメージがあったのですが、実は日本オリジナルの文化だと聞いたことがあります。そして、やはり個人的に「くつろぐ」の最上級は、まさに畳の上でごろんだと思っています。日本に生まれて良かったぁ・・・と実感する瞬間。
一本剥き出しの柱は名栗(なぐり)という、木の削り跡を意匠として残す加工がされています。
実はこの名栗技術、歴史は古く縄文・弥生式時代から始まる木工技術だそうです。昔の家屋の門柱や小屋梁などで使用され、現在も歴史的建造物の修復以外でも欠かせない存在とか。実際、この柱も和室の小粋なワンポイントとなっています。
天井に飾られた「一陽来復」のお守り。
リビングの掃き出し窓からは、ちょっとした裏庭に出ることもできます。
オーナーさんはここで農園的なことをして欲しいそうですが、入居者同士で他にやりたいことがあればそれでも構わないとのこと。都心で庭付きの住まいに暮らす贅沢な機会、ぜひとも有意義に活かして頂きたいものです。
ちなみこちらの庭、どうやら元々はもう少し狭かったよう。今回のリノベーションにあたり家屋を減築したそうで、その名残が右側の壁に残っています。
なるほど、あの辺りまで壁があったワケですね。これをそのまま残すあたりがニクイです。建物の歴史を物語る一片。
続いてキッチン。キッチンはカウンターテーブルを挟んだ向いにあります。
ハードなステンレスと柔らかな木目、そして昭和のタイル壁。様々な時代をミックスした独特の雰囲気を持っている空間です。
タイル壁にはお花の柄が。
実は、昔住んでいた実家に似たようなタイルがあったような気がします。時代性を帯びたデザインの価値は、見出し方ひとつで大きく様変わりするもの。こうして意図的な文脈を持って配置することで、同じモノでも息を吹き返すのが面白いところ。
キッチンはゆとりのある広いスペース。
シンクも壁側とカウンターテーブルに1つずつ設けられ、全7室の今回のシェアハウスでは十分な設備。複数名で動き回るにも余裕のある空間は、日常的に楽しい調理風景が生まれること、請けあい。
本格的なオーブンもあります。
冷蔵庫も二つ。
その冷蔵庫下の床には、何やら不揃いのタイルが見え隠れする不思議な小窓が。
元々この場所はお風呂場だったらしく、当時の様子を鑑賞できるようディスプレイしたのだとか。設計士さんの遊び心でライトアップもできるとのこと。
食器棚は壁側に2箇所。
片方を共有の食器スペース、もう片方を各専有部用に分ける予定。間にあるドアが水回り・専有部・2Fにあがる廊下につながります。
こちらは共用の食器類。
和室に合う湯飲みと急須もちゃんとあります。
キッチンから見たリビングの風景。
こうして見ると、どこにいても陽射しを感じられる暖かい雰囲気がよく分かります。
カウンターには引き出しが付いています。こちらは節のないきれいな木目。
続いて水回り。リビングを抜けた廊下の両側に、バスルーム(右のドア)とシャワールーム(左のドア)があります。
浴槽のフタは檜。浴室は建築当時ものではなく、約20数年前に改築した際に作られたものをそのまま残したそう。
やや迫力のある濃赤タイルが、浴室独特の底冷え感を払拭。安らぎよりも明日への活力を産み出してくれそうな雰囲気。
大きめの鏡と小さな棚が便利そうです。
さて、再び廊下へ。
洗面台は先ほどの廊下の突き当たりを左に曲がったところにあります。
洗面台の鏡は当時の古い化粧台から移し替えたもの。
こちらの洗面台は主に1Fの入居者が使用することになりそう。
絶妙なシルエットの水栓金具がいいですね。
続いて、洗面台を通り過ぎた先、廊下の左側が101号室。突き当たりが102号室となっています。
ちなみに各専有部のオープンなクローゼットは、天板にレールがついているのでカーテンなどでクローズド可能。
細かい配慮が嬉しいです。
このクローゼットの付け方、インテリアとしても邪魔にならずに良いですよね。
他の専有部も含めて天井が高く、窓の外に高い建物がないので採光が良いです。
聞けば、1Fの専有部がある場所は元は写真植字の印刷工場だったそう。ちなみにこの家屋が建てられた1960年代は高度成長や産業界の発展によって需要が拡大し、様々な印刷技術が登場した時代。時代が変われば家屋の使い方も変わる・・・むぅ、感慨深い。
専有部や廊下にある窓はノスタルジックなスチールサッシ。ノスタルジックと書きましたが、僕としては中高の学校の窓がこのタイプだったので蘇るのは甘酸っぱい思い出。
頑健そうな見た目とは裏腹にちょいちょい歪みのある感じ、実際に開けるにも少し重く、ゴムパッキンのない縁がレトロ好きな方にはたまらない。
撮影した際にはまだなかったのですが、専有部の方は断熱性能を高めるために二重窓を付けるとか。
※内窓を取り付けたとの事で2012年3月31日に再撮影を行いました。
確かに、抜群に可愛らしいレトロなサッシにとって、断熱性能は泣き所。レトロ愛で乗り切るもまた良しですが、二重窓にしてしのぐのもまた、それはそれで良し。
2Fにあがる階段前の靴箱。靴箱脇のドアは使用不可となっています。
階段はひとつひとつ段が高いので、少し注意が必要。とは言え、こういった感じも古い家屋ならではの味わい。
焦げ茶に荒く塗装された階段がシブイ。
さて、2Fの廊下には洗面台が3台並んでいます。
廊下の天井は抜かれていて開放感があります。わざとむき出しにされた梁も特徴的。突き当たりがトイレで、そのトイレの左に202号室があります。
洗面台脇の棚には洗面用具を置ける棚を設置。
サインのカラーに合わせた淡い若緑色が爽やか。
202号室は他と比べて床面積が広め。その分、暖房効率を考えて天井が低めになっているとのこと。
窓が南、東向きにあるので日当たりはここが一番かも。202号室は2名入居も可能で、クローゼットも使いやすく2つに仕切られています。
窓から見た玄関アプローチの様子。
2Fの各専有部には欄間と呼ばれるドア上部に、ギミック式の内窓が取り付けられています。
一般的な日本家屋には格子や装飾された板をはめ込んでますが、こちらでは紐で開閉できる窓があり、明かりや換気を調整できる仕組みになっています。
東京タワーの設計をした「塔博士」こと、内藤多仲さんの牛込の自邸にあったものを取り入れたそう。ちなみに1Fの専有部は窓も多く風通しは良いので、この欄間は設置されておりません。
続いて203号室。204号室・205号室とともに、天井の梁がドンとむき出し。
梁は50年前の新築当時と20数年前に改築した際のものが混在。微妙に異なる色合いが逆に新鮮です。照明もつり下げではなく梁に固定されたタイプで、部屋全体がディスプレイのような印象となっています。
オープン前のワークショップで一般参加された方が塗られた漆喰の壁。
2Fは、どの部屋も一部の壁がこのようになっています。
続いて204号室の様子。
幅広の腰窓が気持ちよい部屋です。間取りも素直で使いやすそう。
ロフトへのアクセスは梯子です。部屋の質感と合っていますが、上り下りは慎重に。
物置として使った方が無難という感じ。
3Fは多目的スペースとなっていて、ここに洗濯機が置かれています。
今は1台しかないですが、近々2台目を導入予定。洗濯機の左にあるのは洗面台で、ニット系や帽子など手洗いが必要なものはここで洗ってしまえばすぐに干せるので便利。床はコンクリートなので水滴がボタボタと落ちても気にしない×2。
乾燥機の設置予定はないですが、今後、ここの天井にパイプか紐を吊して室内干しができるようにするそうです。窓を開ければ風通しも良いので、急な雨に心配することなくここで乾かせるだろうとのこと。洗濯物は屋上でも干せます。
多目的スペースは、庭と同様ここも入居者同士で自由に使って大丈夫とのこと。作業場的な空間が不思議なラウンジスペースになる可能性も有り、なのかも。どうなんでしょうか。
見晴らしの良い屋上はそれだけで気持ちを健やかにさせてくれます。
ここにカウンターテーブルを設置するらしく、花火や夜景を見ながらビールをキュッと愉しむ、なんてこともできそうです。
さて住居の最寄駅は、都営大江戸線 「若松河田」駅。新宿だと「新宿西口」駅までで4分。一度乗り継ぎが必要ですが渋谷には15分、東京は24分とアクセスはそこそこ。
こちらの地域は由緒ある山の手の住宅街で、夏目漱石や尾崎紅葉をはじめとする作家・文化人が数多く住んだことでも有名。
昭和初期のスパニッシュ様式で建てられた小笠原伯爵邸や、昭和のシンボル・東京タワーを設計した内藤多仲氏の邸宅も残っております。
駅裏に荘厳にたたずむ小笠原伯爵邸は現在、ミシュランガイドにも載るほどのレストランとして営業しています。
古くからこの土地に住む方も多く、流鏑馬のお祭りや、箱根ならぬ“箱根山”駅伝というマラソン大会が地区主催によって開催されていたりなど、コミュニティ活動が盛んな特色を持つ地域です。
そして「CORE 牛込若松」を運営するのは、宝商事株式会社さんです。
シェアハウスの運営は初めてとのことですが、今回は企画・運営用に特別チームを結成して臨む気合いの入り方。担当の皆さんは、柔和な人柄と真摯な物腰が印象的でした。
COREという名前には、「共に暮らす(Co-housing)をリノベーション(Renovation)でつくりたい」「人・町・歴史のつながり(Communication・Connection)を再構築(Rebuild)したい」という意味が込められているのだとか。
住居の中だけではなく、牛込という地域との関わり合いの中でも居心地の良さを形作っていきたいとのこと。今後もワークショップや街歩きイベントなど実施して、町ぐるみで近所付き合いができるような環境を作っていくそうです。
レトロも好き、今らしい暮らしも好き、そんな方はコチラからぜひお問い合わせを。
住まい選びの基準って、物件の居心地の良さや都心へのアクセス・周辺環境がまぁ主なところかと。でも今回の取材を通じて、その地域の歴史や文化という項目が加わっても面白いんじゃないかなぁと思いました。
もしかしたら「レトロ」という言葉だけではもったいないくらいのロマンが、至る所に人知れず隠れているのかも。そう思うだけでこれまでの視点ががらっと変わりそうです。
(ソン)
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