企画担当者が語る「シェアプレイス 行徳」の心地よさ
2016年末にオープンした「シェアプレイス 行徳」。ラウンジ・リビング・キッチンと3つの共用部が緩やかに繋がる、特徴的な間取りの建物です。スタイリッシュな建物に広がる、心地よさ。企画・運営の担当者さんに秘密を聞いてみました。
空間が分かれてしまう間取りを、逆手に取って生まれた共用部
まずは建物について教えてください。
綾村さん
以前は社員寮として使われていた、築25年の建物です。実は3~4年前に建物を見たときからシェアハウスとしての活用をご相談させていただいて、ようやく実現に至りました。
正直に言うと、間取りとしては難しい建物でした。今までわれわれが手がけたシェアハウスは広い共用空間を設けているのですが、この建物はそのまま共用部として使える場所が小さな空間ひとつしかありませんでした。ですから、共用部をどのように設けるかというのが、ひとつの鍵だったんです。
元々部屋だったところを潰したり、外部だったところを内部にしたりと変更して、ラウンジ、リビング、キッチンと3つの共用部を作りました。部屋も元々は50室だったのですが、最終的には54室に増えています。
もともとあった建物の特徴で、残したかったものはありましたか。
綾村さん
建物自体デザイナーズのようなテイストの建物で、雰囲気がいいんです。コンクリート打ちっ放しの仕上げだったり、鉄を使っている箇所も多いです。
新たに行ったのは床の張り替え、一部壁の塗装、照明の変更くらいかな。ほかはそのまま既存のものを利用しています。もともとの建物のテイストを残しながら、あまり華美になりすぎないように作っていきました。今まで手がけてきたシェアハウスだと、木を多く使ったりして、ナチュラル系が多い傾向にあったのですが、また違うラインになったと思います。
空間が分かれてしまう間取りを、逆手に取って生まれた共用部
建物の条件で悩んだことなどありましたか。
綾村さん
機能的な話だと、建物の入口に勾配が付いていて、雨が降ると浸水するという状況だったことでしょうか。建物の床が低く、1階のフロアのほとんどが玄関周りと同じフロアレベルだったんです。そのせいで浸水が起きてしまうので、床が高かったエレベーターホールに揃えることにしました。
あとは、もともと新耐震の建物なので本来は必要ないといえば必要ないのですが、耐震についても合わせて確認しました。
ラウンジにはなぜこの段差を?
綾村さん
視線のコントロールのためです。段差に腰掛けたり、椅子に座ったり。それだけでいろんな高さの視線が生まれます。ラウンジはエントランスを入ってすぐの場所で非常に開けているので、生活の中で一番パブリックな場所になります。友人を呼んでご飯を食べたり、プロジェクターで映像を見たり、という使い方がメインになってくると思っています。
キッチンはパブリックなラウンジより、もう少し生活に近い部分。リビングは入り口が狭いので、よりプライベート感が増します。距離感がグラデーションになっていき、かつエレベーターホールを中心として緩やかにつながるという計画です。
インテリアの意図を教えてください。
綾村さん
リビングはソファーやラグが入ったり、低めの視線の家具が多いですね。床座というところまでは想定していませんが、ラグも入ることで、より地面に近い視線でくつろぐことができるので、低めの家具をそろえました。
逆に、キッチンは高めの視線になっています。キッチンと対面に設置したテーブルは特注で作っているのですが、一般的なテーブルより少し高めになっています。ハイスツールに座ってごはんを食べるというだけでなく、キッチンから振り向いて作業するような使い方も想定しています。ダイニングテーブル兼作業台のような感じで使えるといいと思っています。
まず<家>であること
飽きずに長く愛される物件の作りかた
企画のキーワードはありましたか?
綾村さん
最初のキーワードとしては「たまり場」です。共用部がひとつの大きな空間として取れないという、どちらかというとデメリットに見えるところを逆手にとって、人がたまれる場所が3つもあるよねと。
そこから繋がるもうひとつのキーワードは「距離感」。共用部が3つあって、それぞれの空間に高さが違う家具があり、同じ空間にいても距離感を調整できるような作りになっています。 さらに、専有部はユニットタイプなので、専有部からユニット、ユニットから共用部、共用部から建物の外へ、と展開できるようになっています。3つの共用部だけでなく、専有部に近い部分もグラデーションがかかるようになっているので、そこも含めて自分で居場所を選択できるところが、この物件の価値だと思います。
室町さん 居心地のいい場所を常に見つけられる、気分に合わせて過ごす場所を選べる物件というのがポイントですね。
どのようにコンセプトを決めたのでしょうか。
綾村さん
ちょうどプロジェクトを進めていた2016年9月末に、自社サイトをリニューアルして、ブランドメッセージも一新したんです。 そのタイミングと、今回の企画のタイミングがそろっていたので、そのメッセージに当てはめて考えていきました。ですから、「シェアプレイス 行徳」は、私たちのブランド「シェアプレイス」が何を伝えたいのか、一番突き詰めて作ったと言えます。
<コンセプト型シェアハウス>ではなく、まず<家>である、という考えがベースになっています。流行り廃りによって価値が変わらない、飽きずに長く愛される物件を作ろうというのが根底にある私たちの思いです。それが距離感やたまり場というキーワードにつながっていきました。
別のシェアハウスや建物から、アイデアを取り入れたものはありますか。
梶田さん 特別なものではないかもしれないですが、専有部内の物干しワイヤーや、メンテナンスのしやすい塩化ビニルの床材は、今までの積み重ねの中から選んでいるものですね。
綾村さん
細かな点ですが、入居者さんの利用頻度が高いAmazonからの宅配物がきちんと入るポストを導入しました。間口が広くて奥行きの深いタイプです。
あとは、運営チームからリクエストがあり、共用部の鍵を遠隔管理できるように変更しました。今までは、もし入居者さんが鍵を紛失した場合、その登録をするために現地まで行って作業しなければならなかったんです。でも、遠隔操作ができるシステムを導入したことによって早急な対応が可能ですし、入居者さんの安全性を高めることもできます。
梶田さん安全性を高めると言えば、窓の手すりも取り付けました。
綾村さん もともと、窓が下から70センチぐらいの高さにある腰窓だったんですが、下手すると腰掛けて落ちてしまうという懸念があったので、手すりを付けました。 あとは専有部内に一部排水管が通っているところがあって、上階のシャワーブースを使うと流水音が響く可能性が高かったんです。それを防ぐために、排水管に吸音材を巻いた結果、まったく音が漏れないようになりました。 鉄が使われている箇所が非常に多く、建物の周囲に設置されている避難経路も鉄のグレーチングになっています。ただ、一部潮風で腐食している部分を見つけたので、すべてチェックして新たに補強をかけましたね。やはり、リノベーションの会社なのでそこはおろそかにできません。もちろん外観も塗り直してきれいになっていますけれども、その前段として安全性をかなり確保した上でやっています。
入居者さんから今まで出たリクエストはありましたか?
綾村さん それが、あまり出ないんです。入居者さんが普通に思っているところ、気づかないところがそうなのかもしれない。
梶田さん 新しいこととして、今回は初めて各部屋ごとの収納をつくりました。今までは3〜4人のユニット内には、各室ごとに収納できるような場所がなかったんです。共用で使える収納は用意していましたが、それでは誰のものかわからなくなってしまったりという懸念があったので、今回は部屋ごとにひとつひとつ収納スペースを用意しています。
綾村さん 収納の有無や大きさはユニットによって異なるので、必要に応じて選ぶこともできますね。最近の傾向として一般賃貸から引っ越してくる方が増えているんです。ひとり暮らしの方は荷物が多いですから、極力収納部分を広く設けることによって、引っ越しもしやすくしています。
「住む」を突き詰めてたどり着く、行徳の街
東西線の利便性も、街の暮らしやすさも手に入れる
どんな入居者さんが多くなりそうでしょうか。
室町さん 最寄りの行徳駅が東西線沿いなので、竹橋・大手町など、東西線沿線にお勤めの20~30代の方がメインでしょうか。上京して就職が決まった方とか、この春に大学を卒業する方もいます。最初は男性寄りかなと思ったのですが、女性の問い合わせも多いです。
綾村さん 実家が千葉方面で、もうすこし都内に近い場所で独立を考えている方にも良いかもしれません。実家と勤務地の中間ぐらいの立地である行徳に新しくシェアハウスができるから、とお越しいただいた方もいました。
梶田さん 今回千葉県で企画するという意味では、こちらの物件が初めてのプロジェクトでした。実家の千葉県から独立しても適度に近いところでと考えている人にとって、ターゲットになる物件がなかった中で、今回はそういった方にも喜んで頂けるのではないかと思っています。
具体的には、どんなライフスタイルになるのでしょう。
室町さん 沿線にお勤めの社会人の方ですから、朝8時頃には出勤していくイメージになると思います。夜、仕事が終わって帰ってきて、ふらっとラウンジやリビングに寄ったら誰かがいて話ができる。休日は友達を招いて、一緒にキッチンで料理したりできたらいいと思っています。
綾村さん
シェアハウスの良いところのひとつは人を呼びやすくなることかもしれないですね。人を家に呼ぶ行為を、シェアハウスに住むからできる。他のシェアハウスでもそういうシーンを見ています。
面白いのは、僕らが案内したように入居者さんが友達に案内をしているところ。あの光景を見るとグッときますね。あまり家には興味がなさそうな女の子が友達にそうやって案内しているのを見ると、良かったなと思います。
梶田さん自慢できる家という感じですね。
綾村さん
自慢してくれている事がうれしい、そういうことをするキッカケになってよかったと思います。「シェアプレイス 行徳」もそうなったら良いなと。
企業にお勤めの方が多いと思うので、そういう方にとって居心地のいい場所にしたいと思っています。照明も色の温度が低い、温かい感じの照明にしているんです。帰ってきたとき光がガラス面から漏れて、「家に帰ってきたな」とホッとした気持ちを感じられるようにしたいという思いがあります。
梶田さん 空間で見たら”家っぽさ”はあまりないんですけれども、そういう感覚的なところで感じてもらえたらいいですね。
綾村さん もともと閉じた印象の建物だったので、それが開けた印象になったというのは良かったところのひとつだと思います。
「普通」の人が住みやすい家を目指したい
行徳はどんな街ですか?
室町さん 駅周りにスーパーやドラッグストア、飲食店など一通りそろっていて、かつ平坦な場所なので、買い物や食べ物に困らない場所です。駅まわりは賑やかですが、物件のまわりは戸建ての住宅が多いエリアなので、内覧に来た方も安心しているようです。実は有名なクリームパン屋さんがあったりして、食べ歩きも楽しいと思いますよ。
綾村さん
行徳というとイメージをしづらいですし、最初はどうなんだろうと思うはずなのですが、実際に街を歩いてみると地方都市のようです。人が多すぎない、建物はそれほど高くない、ドンキがある(笑)
私の地元は金沢なのですが、上京前に東京に抱いていたような怖いイメージは行徳にはなくて、個人的には落ち着く感じがしました。とても便利で住むにはまったく困らないですし、「住む」というところを突き詰めるととてもいい場所です。東西線に乗れば東京のど真ん中に出られるし、住む環境としてはこのぐらいの密度のほうがいいはずだなと。東西線は時間帯によって少しは混むかもしれませんが、乗降もそれほど多くないですし、コスト的にも環境的にも利便的にも住みやすい街ではないかと思います。
おそらく行徳は日常の買い物がメイン、休日遊ぶのは都内に出るという感じでしょうか。電車で一本の日本橋は開発が進み、盛り上がっているエリアです。最近は「&WORK NIHONBASHI」の1階にクラフトビール屋さんが入っていたり、フリースペースができたところもあります。あとは大手町のほうへ出てしまえば、どこでも行けるのもいいところだと思います。千葉方面に来るとグッと家賃が下がるので、その差額を趣味に充てるとか、そういう選択もありますよね。
最後に、「シェアプレイス 行徳」どんな空間にしていきたいか、想いを教えて下さい。
梶田さん 良い意味で「普通の方」が住みやすい場所を作りたいなと。シェアハウスを経験されてきている方とか、外国籍の方ももちろんいらっしゃると思います。20代から30代の社会人の方が多いと思うのですが、そういった方々が過ごしやすい環境を作っていきたいと思います。
綾村さん それが、私たちが目指すところだと思います。手前味噌ながら住みやすい家になっていると思うので、見に来ていただけると生活イメージも湧くと思います。私たちも、具体的にいいところも悪いところも説明をします。ですからまず家を見て、そして街を見てもらった上で、じっくり考えて欲しいですね。
千葉県初のシェアプレイスプロジェクトである、シェアプレイス行徳。その最大の特徴は、3つのゆるやかにつながる共用空間にあります。ついつい手の込んだ料理にも手を出してしまいたくなる広々としたキッチン。ラウンジやリビングにふらりと立ち寄れば自然とおしゃべりがはじまる。今日はひとり心静かに過ごしたい、そんな時は個室でゆっくり過ごす。ここでは、その時々の気分に合わせて、自分にとって心地の良い居場所、人との距離感を見つける暮らしを送ることが出来ます。陽気に合わせて服を着替えるように、自然に、自由に過ごせる毎日に関心を持たれた方、ぜひ一度ご見学にお越し下さい。
誰かといる時間とひとりでいる時間、そのどちらもを大切に。 「今日どこいよう?」